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2012-09-21-Fri-16-35

懐かしい「クリームパピロ」の工場に潜入しました。

ちょっと企画を思いついた。
古いマシンがいまだ残っている町工場を訪ねる特集記事みたいなものができないだろうか。
「最新機器……ではないけれど。いまでも現役! 関西オールドマシン・ファクトリーの優雅な世界」みたいな。

『8時です!生放送!!』(J:COM)の街ぶらリポーターをつとめる仕事で、阪神「大石」駅周辺をひたすら歩いた。

大石といえば、名だたる酒どころ「灘五郷」の最西端。
「西郷」と呼ばれるエリアにあたる、海沿いの街。
昔からお酒の量は「石(こく)」という単語を用いて計算しているので、地名にもその名残があるのだと思う。

阪神電車の線路を隔てて、海へと向かえば銘酒「沢の鶴」が、山へ向かえば有名な「金盃」の蔵がある。
ほか大小の酒蔵が軒を連ね、駅を降りると、爆ぜたてのポン菓子のような、米麹の甘~い香りが漂っている。

取材の目的は「来たる10月1日は“日本酒の日”(なんですって奥さん)。ということで日本酒に合うグルメをさがそう」というものだった。

BUT……さすが近畿を代表する日本酒の名産地、灘。
どこも酒蔵がデカすぎて、蔵というより酒工場。
街の雰囲気はもろに工業地帯で、想像していた日本の情緒あふれる酒郷の景色とはぜんぜん違っていた。
ここはあくまで酒を製造出荷する街であり、呑み食いや買い食いするところじゃなかったのだ。

暗澹たる気持ちになり、しらふなのに千鳥足になりながら宛てなく住宅地をさまよっていると、さきほどのお米とはまた異なる、香ばしいにおいが鼻腔をくすぐった。

看板には大きく「瓦せんべい」の文字が。
煎餅を焼く和菓子屋さん?

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ところが店名はというと、和テイストが微塵も感じられな「神戸コランバス」。
コランバスってなんだ?
サロンパスなら知ってるけど。

怪訝に思いつつ店の前にかかったすだれをめくると、懐かしい「クリームパピロ」が並んでいた。

DSC04348.jpg

「クリームパピロ」とは、小麦粉を卵やハチミツで溶き、かりっと焼いた巻きせんべいのなかにクリームを注入したもの。
素朴な甘さの、そこそこ固めな小麦粉せんべいに、じゃりじゃりした駄菓子風味なクリームが詰まっている。
「クリームパピロ」を知らない人は「グリコのコロンをもっと野武士化した感じ」と言えば通じるだろうか。

量り売りだと安く買えるため(往時のおやつは、お菓子屋さんの店頭で一斗缶で売られていた)幼い頃のおやつの定番だった。
もしかしたら、初めて食べた洋菓子だったかも(完全に和製洋菓子だが)。

実はこのお店(というかこの工場)、老夫婦が営む「瓦せんべい」「クリームパピロ」の製造卸販売所だったのだ。

ノースリーブ姿で気さくに対応してくださったのは、「神戸コランバス」社長であり、界隈で唯一「クリームパピロ製造マシン」を操縦できるせんべい職人、横田純二郎さん。
横田さんはこの道45年という、パピロの匠。
なんと脱サラして、洋菓子と和菓子のマリアージュともいえる小麦粉のせんべいを焼き始めた。
なかでもクリームパピロは昭和の時代には本当によく売れ、ひとりで一日4トン(!)を手焼きしていた時期もあったという。
トンて!

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とにかくパピロをローストするマシンの、飴色にただれたヴィンテージ感が素晴らしい。
機械というより大きな道具であり、製造のほとんどの箇所は手作業だ。
「こんな味わい深い機械があると、これまでテレビなどがたくさん取材に来たでしょう?」と問うと「取材を受けたのは今日が初めて」とのこと。
大手柄!

この日は残念ながら材料の備蓄がなかったため「エア焼き」「エア巻き」「エアクリーム注入」を披露していただいた。
パントマイムで行うクリームパピロ・メイキングでありながら、時々ご主人が段取りを間違えるのがリアル。
心の美しい人だけに見えるパピロがあるのだろう。

ちなみに店名の「コランバス」だが、「テキトーに名づけた。コランバスという国が確かあったよなあ、と思ってつけたが、そんな国はなかった」とのこと。
きっとその国は、地図には載っていない、せんべいの妖精の聖地。

店頭にて売られているものは、見た目が悪くて卸せない失敗作なのだとか。
だから市価の半額以下で買える。
ミステイクとはいえ、バニラ色、チョコ色、イチゴ色(あくまで“色”)の3種のクリームはたっぷりと充填され、味には遜色がない。
それをひとふくろ袋パンパンの満タンで、わずか250円で買えるとは。
ああ、クリーム(パピロ)の素晴らしき世界!
(クリームが入っていない、せんべいパートだけのその名も『ロール』や、カットした際に出る端切れも販売している。説明書きがまったくないので一瞬ゴミかと思った)。

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幼い頃に食べた、牛乳ととてもよく合う、関西っ子のおやつ、クリームパピロ。
僕が食べていたあれは、このおじさんがひとりで焼いていたものだったのか……。
期せず唐突に現れた幼少期の原風景。
まるでタイムマシンのタイヤに巻き込まれたかのよう。

辛党の街、灘で出会った、意外な甘党の店。
一滴も呑んではいないのに、甘露なひと時に、しばし酔いしれた。
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