TOP(最新情報)イベントプロフィール著 書更新情報街歩きブログ日 記
-----------------

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
2013-01-11-Fri-19-54

「ダメ人間」の世界



「三角でも四角でもなく六角精児」(講談社)を読みました。

『週刊現代』で連載が始まった頃から「単行本にまとまってほしい」と切願していた一冊。
ものすごく、おもしろい。
めちゃくちゃ、おもしろい。
今年読んだエッセイ集で一番おもしろい(今年はまだ一冊しか読んでいませんが)。

ドラマ「相棒」の鑑識官・米沢守役であったり、「電車男」の軍事マニア・牛島であったりと、役柄は主に毛穴から童貞臭を放つインドアタイプ。
ミシュランのキャラクターめいたぶよぶよした体型の、僕ら「餅体型族」の総大将であります。

しかし油断は禁物。
一見、忍たま乱太郎の福富しんべヱ的な人畜無害キャラとかと思いきや、実はナックルズでマッドマックスなアウトロー。
入籍4回(うち2回は同じ女性)、ギャンブル狂い、サラ金で1000万円近く焦げつかせたことがあるというツワモノ。

そんな六角さんの、ひりひりとしたスリリングな日々が淡々とした筆致で綴られる。

ブラックなマチ金に手を出してしまう日があり、
安い焼酎をあおって記憶をなくし見知らぬおっさんと一夜の背徳を共にした日があり、
暇そうなカジノに飛び込んで一瞬で30万円をドブに捨てる日があり、
滞納がかさんでライフラインの最後である水道まで止められる日があり――。

筋肉ゼロの大きな身体はぷよっぷよ。
だのにそれら破滅の日々を「随筆」と呼びたくなる、硬質な文体で綴る。
単なる自虐エッセイではない。
永い間の放蕩の果てに自分に愛想が尽き、自分で自分を突き離し、そのために絶妙に客観視できる距離感が生まれ、とてもクールでソリッドな名文が誕生した。
鑑識すると、そんな感じ。

しかしこういう人って「ダメ人間」と言われることが多いんだけど、でも本当にそうなんだろうか?
六角さんも、六角さんが愛する私小説家の西村賢太も、西村賢太の小説に出てくる北町貫多も、読んでもぜんぜんダメ人間だと思わなかった。

金にだらしないとか、ギャンブルに狂うとか、借金があるとか、そんなの別になぁ。
自分で自分を苦しめるわけだから、自業をオール自得でクリアするわけで、こぎれいなもんだと思う。
そもそも金融機関なんて、迷惑かけたぶんも利子に換算して払うんだし、自己破産も国が決めた法律に則ったものなのだから、システマチックこのうえない。

金にだらしないよりも、時間にだらしない(逆算できない)ほうがぜんぜんダメですよ。
借金されて困るのは数人。
でも時間の感覚にだらしないのはヘタすりゃ何社も巻き込む大惨事になりますから。

もっと言うなら、他人が決めた時間にだらしなくても、それはまあいい。
もっとも悪劣なのは、自分で決めた時間にだらしないこと。
自分を欺くことに平気になると、しだいに他人を欺くことにも無感覚になる。

そして本当にダメなのは、できないのに、できると言うこと。
客観的に自己の能力を評価できず、相対評価もできていないのに自己評価が高く、根拠がないのにあると思わせ(本人も思い込み)、煽動も派手で、周囲に過度に期待をさせて、実は何もないという人間。

そんな悪魔のようなあいつが、かなしいかな僕は心の中にも住んでいます。
なんとか表出せぬよう餌を与えず飼い殺しにしたいのですが、いつなんどき鎌首をもたげて這い出てくるか……。


関連記事
スポンサーサイト


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。