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2012-05-06-Sun-13-17

メイドと血

男には、いつか越えなければならない関門がある。
艱難辛苦の荒波を乗り越え、茨の道を掻き分けてでも、辿り着かねばならないステージがある。
僕にとってそれは、メイド喫茶だった。

英国の使用人の衣装を身にまとった女子が「お帰りなたい。ご主人たま」と舌足らずな口調で出迎えてくれるメイド喫茶。
このメイド喫茶のブームがピークに達したのが2005年。
往時の秋葉原は、全国からメイド喫茶を詣でる人々で賑わう観光地と化し、長蛇のつがいなみの行列ができるほど狂乱の様相を呈していた。
「お帰りなさい」
「いえ、東京、初めて来ました」
こんな不毛な会話がどれほど交わされただろう。
知らんけど。

貴婦人との階級格差を可視化したメイドファッションに特に愛らしさを感じられず、どちらかと言えば女性にかしずきたいタイプなので(唐突なカミングアウトでごめん)、男たちがメイド喫茶にとろける心理がわからなかった。
だが往時、東京に住んでいた僕は、もうわからないでは済まされなくなっていた。
ことライターの世界では、メイド喫茶未踏者など、いつまでもデニムのことをジーパンと呼ぶほどに役立たずだったのだ。

やっと腹をくくれたのは、ブームが円熟期を迎えた2006年の冬。
メイド喫茶、首を洗って待ってろ!
前日から水垢離をして気合を入れた。
しかしながらひとりで行く勇気がどうしても湧かず、ルポ漫画を得意としていた熟女イラストレーターさんとOLさん、ふたりの女史にお願いをし、男1女子2の三人奴体勢で臨んだ。

店名は忘れたが、きゃりーだか、ぱみゅぱみゅだか、なんかそんな、はぁとふるなネーミングの店。
聞きしに勝るとはこのこと。
ビルの外、道路にまで連なる大行列。
寒風吹きすさぶなか、1時間はゆうに待つことに。
ラーメン屋でも並んだことがないのに、喫茶店の行列に加わったのは初めてだ。
そうしてやっとあと数組で入店ができる番となり、扉を見れば、そこには……残酷な掲示が。

リサーチを怠った僕が悪かった。
メイド喫茶には、当然、メイドさんがいるのだと思っていたのだ。
しかしその日は月に一度の「妹day」だと書かれている。

妹のコスプレ?
興味ない興味ない!
妹って普通、家でジャージ着てだらだらしてるんとちゃうん。
全員ジャージかスエット?
ケツとかボリボリ掻いてんのか?
そしてドアを開けると、誰か知らん人の妹が「おかえりなさい、おにーたま、おねーたま」と出迎えてくれた。
おにーたまって、お前は小松政夫か。
寒風にさらされつつ一時間キープし続けたモチベがダダさがりに落ちていった。

結局その日は『ましゅまろ(はあと)ここぁ』なる、ココアの表面に溶けたマシュマロが浮かぶ、見た目に臓六の奇病みたいなもんを飲んで帰ってきただけだった。

メイドさんには会えずじまい。
もともと40代以上のおねーたましか興味が湧かない僕。
メイド喫茶の神から「お前には、まだ早い」と告げられた気がする。
誰やねん、メイド喫茶の神。

あれから6年。
きのう、京橋のコンコースに「メイド献血」の女子が立っていた。

献血女子


さすがに驚いた。
どこかの大学のサークルが、若者の献血への意識を高めようと、メイドに扮してキャンペーンをしているのだとか。
そうやって献血をする若者が増えるなら、けっこうなことだ。
なんら批判するいわれはない。

ただ、ストリートに立つメイドさんが、かわいさのアイコンというより、現在の格差のを象徴する存在としてそこにいる気がして、かなしい気持ちがよぎった。
メイドはやっぱり喫茶に限る。
たぶん。
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